香りの記憶を呼び覚ます

kasanéが用いる素材は、すべて日本の風土に抱かれて育った木々です。

檜(ヒノキ)、松(マツ)、籔日桂(ヤブニッケイ)──
それぞれが、私たちの暮らしの側で静かに香りを放ち、記憶の奥にやさしく残り続けてきました。

これらの木々は、ただ香るために存在しているのではありません。

長い年月をかけて大地の恵みを受け、人の営みとともに呼吸しながら、日本という土地の感性に深く根を張ってきた存在です。

kasanéは、その香りに宿る“時間の層”をすくい上げ、一滴の中に、日本の記憶を重ね合わせていきます。

檜の清らかさ、松の静けさ、籔日桂のぬくもり。

それぞれが異なる時間を生きながら、ひとつのボトルの中で重なり合う。

― 日本の森が語る、三つの声

檜 ― 静けさの中に息づく、清らかな記憶

檜(ヒノキ)は、日本の森を象徴する木。古くから神社仏閣の建材や湯殿に用いられ、清らかさと神聖さの象徴とされてきました。

その香りは、まるで朝靄の中で深呼吸をするような透明感を持ちます。

湯気のようにやわらかく包み込み、心をほどくような静けさをもたらす──

kasanéのジンにおいて檜は、“清浄”と“再生”を感じさせる層として息づいています。

籔日桂 ― 森の記憶を宿す、あたたかな余韻

籔日桂(ヤブニッケイ)は、あまり知られていない日本原産の木ですが、その香りはどこか懐かしく、湿った森の奥を思わせます。

葉や樹皮に触れると、わずかにスパイスと甘さが混じり合うような温かさが広がります。

それは、古い木の家、焚き火の残り香、雨に濡れた土──

日本人の暮らしの中に流れてきた、記憶としての香りです。

kasanéでは、このヤブニッケイが香り全体にやわらかな陰影を与え、心の奥に静かに残る余韻を生み出しています。

松 ― 永続を象徴する、静謐な強さ

松は、冬を越えて緑を絶やさぬ常緑樹。

日本では古来より「不変」と「誇り」の象徴として、正月の門松や神前の飾りに使われてきました。

その香りは、乾いた木肌の中に凛とした清さを秘め、同時にわずかな寂寞(せきばく)を感じさせます。

時を重ねても変わらぬその姿は、静かな強さそのもの。

kasanéの中で松は、香りの骨格をつくり、他のボタニカルを優しく支える役割を担っています。